
「探究学習を通じて、生徒が大きく成長しているのを実感します」ー十文字中学校・高等学校 自己発信コース主任 飯島奈海
Edv Futureのインタビューに対して「これまで、生徒がもともと持っている力を信じて、成長を我慢強く見守るということができていなかった。できるならやり直したいぐらいです」と飯島先生は語った。この発言の背景には、一体どのような想いがあったのだろうか。飯島先生の発した「できるならやり直したい」という言葉の真相に迫る。
人物紹介
飯島 奈海(いいじま なみ)ー1998年、十文字中学・高等学校入職(国語科)。難関大学受験を目指す「スーパー選抜クラス」の担任を経験したのち、教科主任を経て、中1~高3学年主任を6年間務める。2022年度には新設された探究特化型「自己発信コース」主任に就任。中学・高校の探究学習総括も務める。 |
学校紹介
学校情報住所:東京都豊島区北大塚1-10-33在校生:1104名(高校)今回導入したクラス:高校1年生導入時期:2022年4月〜 |
新設「自己発信コース」主任に抜擢される
十文字中学・高等学校では、2022年度より高校でコース制を敷き、探究特化型の「自己発信コース」を新設。このコースの特徴は、生徒自らが興味関心のあることを深掘りし、思考したことを発信する“実践的な学び”に主軸を置いている点だ。高1から高3まで「総合的な探究の時間」が週4コマ設置されており、高1ではさらに探究スキルを学ぶ授業が週1コマ設けられている。
飯島先生は、これまでの大学受験に焦点を当てた指導とは一線を画した新コースの主任に抜擢された。
高校での学びが、大学の一般入試や模試を意識したものになっていることは「ある程度、やむを得ない」と考えてきた飯島先生。学校長から「自己発信コース」の主任に任命された時の心境について、次のように振り返った。
「私自身、どちらかというと難関大学の受験指導を得意としてきましたし、学校からもそれを期待されていると思っていました。横尾校長から自己発信コースの主任を担当してほしいと言われた時は、思いがけないことで非常にびっくりしました」
しかし、飯島先生は、探究型コース設置という新しい試みへのチャレンジに対して、「おもしろそうだ」「やってみたい」とも感じたという。
「自分がこれをぜひやりたいという強い思いやこだわりはそれほどなくて、誰かが出したアイデアが、仲間で話し合うことによってさらによいものに変わっていく、その過程を特に楽しく感じます。また、前例のないことをやってみるのも好きです。だから、これまでも、若手教員の『こんなことをしてみたらいいんじゃないですか?』という提案に『いいね!』と賛同して一緒にやる、というのが私の役割でした」
受験状況の変化ー「探究的な学び」への理解進む
「実は、数年前から『総合的な探究の時間』にしっかり取り組もうという動きはあったんですが、学校全体の動きにはならず、さらにコロナ禍が追い打ちをかけて、学年の取り組みも停滞してしまったんです…」
「自己発信コース」の新設から遡ること2年ほど前、十文字中学校・高等学校には、生徒一人ひとりが自身で設定したテーマを調査・分析し、最終的にレポートやプレゼンの形にまとめて発表する取り組みが実際にあったという。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休校が続いたことにより、生徒の個人研究が上手く進められない状況になってしまった。
コーススタート当初は、『総合的な探究の時間』の授業を週4時間実施する新しい試みに対して、入試に向けた学習に支障をきたしてしまうのでは?と不安視する声もあったという。
各大学が総合型選抜の募集枠を大幅に増やし、入学生に求める力が変わってきているにも関わらず、本校がそれに対応しきれていない、ということも肌で感じていましたという飯島先生。「探究的な学びを用いた進学が増加する中で『新しい進路選択の方法』として、だんだんと認められるようになった」と感じた飯島先生は「自己発信コース」の主任を務めることを決心した。
アセスメント結果をもとに行事を新たにつくったことも
2022年度、十文字高等学校自己発信コースは、「生きる力」の測定ツールであるEdv Pathのアセスメントを導入した。生徒が現在どのような状態なのかを把握することは、生徒自身にとっても、教員にとっても重要なことだと飯島先生は話す。
Edv Pathの導入以降は、学校行事の前後にWebアセスメント機能を利用した「生きる力」の分析を実施するようになった。これにより、行事を通して生徒がどう変わったのかを客観的に把握できるようになったという。
「きっとこの力が上がるだろうと思っていたら意外と上がっていない!なんてこともあり、仮説と検証を繰り返しながら、教員側も探究しているような感じでした」
特に飯島先生を驚かせたのは、持続可能なビジネスプランを提案する高校生ビジネスプラングランプリのエントリー直後に行ったアセスメント結果だ。自分自身で意志決定をする能力や挑戦する力などの向上を見込んでいたが、実際にはビジネスプランを期限内に提出しなければならないという「やらされ感」で、それらの数値が下がっていた。
そこで、予定していた学校内での報告会は、生徒にすべての運営を任せることにした。この経験を経て、生徒たちは「自分たちでやりきった」という達成感を得ることができ、その後のアセスメントでは上記の力に加え、やり抜く力やスケジュール管理能力の向上も見られる結果となった。
飯島先生によれば、従来は「行事が終わればひとまずよし」だったと振り返る。しかし、Edv Pathの導入後は、アセスメント結果をもとにしたEdv Futureとの意見交流会をする中で、今後の指導や取り組みに向けた反省をすることができるようになったという。
生徒の『生きる力』を育成する重要性を実感
「この1年間で私の考え方はすごく変わった気がしますね。本当にこれまで関わってきた生徒たちに謝りたいぐらいなんです」
ここ1年間の激しい動きの中で飯島先生は、これまで従来通り指導を行ってきた生徒に対して『生徒たち一人ひとりの力を十分に引き出してあげられていなかったのでは?』と後悔の念を抱いているという。
Edv Pathとともに過ごしたこの1年間が、教員としての在り方を見直し、生徒の『生きる力』を育成する重要性に気が付くきっかけになったと話し、さらにこの経験で得られたことを他の先生方にも伝えていきたいと次年度への抱負も語った。
生徒の個性、状態を見える化して、生きる力をさらに育むために
