
「データの利活用、誰一人取り残さない学校を作る」ー成田市立西中学校 学校長 藤崎修治・生徒指導主事 風間孝幸
(左:学校長 藤崎先生、右:生徒指導主事 風間先生)
2023年度に設立された「リーディングDXスクール事業」の指定校となった成田市立西中学校。同校の掲げる目標は「ICT機器の日常化」「生徒の目に見えないSOSや非認知能力の可視化」だ。先進的な取り組みを通じて目指すのは「誰一人取り残さない学校」だという。そんな学校作りに取り組む藤崎校長と風間先生に話を伺った。
人物紹介
藤﨑 修治2021年4月、成田市立西中学校の校長として再着任。同校には、教諭・教頭・校長としてこれまで合計13年間勤務。また、成田市教育委員会及び千葉県教育庁にて教育行政を経験。同校では、「誰一人取り残さない学校」を目指し、生徒の心に寄り添うICT教育のあり方について模索している。 風間 孝幸2020年4月、成田市立西中学校に着任。2021年4月からは同校の生徒指導主事として 学校経営目標である「誰一人取り残さない」を実現するための体制作りに注力。現在は、生徒の内面に浸透する指導・支援をおこなうために、ICTを利活用した心のSOSの発信や不登校支援に尽力している。 |
学校紹介
学校情報住所:千葉県成田市加良部5丁目11-11在校生:中学生433名今回導入したクラス:中学1~3年生導入時期:2023年4月〜 |
リーディングDXスクールとして、日常的なICT利活用を目指す
成田市立西中学校は、2023年度に設立された「リーディングDXスクール事業」の指定校の一つ。文部科学省が実施する本事業は、指定校がGIGA端末上でソフトウェアとクラウド環境を最大限に活用し、その実践事例で得られた情報を全国に共有。学校現場におけるICTの「普段使い」を目指すものだ。
ICT端末の日常的な活用を目指すために、同校では2つの柱を設けていると藤崎校長は語る。
「1つ目は、『ICT機器の日常化』です。これまで本校では授業内で積極的なICT機器活用を進めてきました。次のステップとして取り組みたいと考えているのは、教師中心ではなく、生徒を主体としたICT機器の活用推進です。」
また、風間先生は2つ目の柱について、『生徒の目に見えないSOSや非認知能力の可視化』だと話す。
「生徒を取り巻く人間関係や自己肯定感、非認知能力の測定にEdv Pathを活用しています。データをもとに心の変化を定点観察することで、生徒の不登校リスクやSOSのサインを素早く把握しやすくなりました」
さらに同校では、毎朝その時の心の天気を記録する「スクールライフノート」も用いながら、日頃から生徒たちがネガティブな気持ちを吐き出しやすい環境づくりもおこなった。このように、客観的なデータをもとにした定点的な生徒の変容把握とSOSサインの発信方法の整備によって「誰一人取り残さない学校」を目指している。
客観的な指標によって生徒理解がアップデート
全教員がデータをもとに生徒の非認知能力の変化を把握できるようになったことで、生徒理解にも良い変化があったと語る藤崎校長。
「本校では、毎週『生徒指導会議』を実施しています。そのなかで、気になる生徒に関しては、Edv Pathのアセスメント結果を教員一同で確認しながらどのような支援ができるのかを検討するようにしています。例えば、問題行動を取っている生徒のアセスメント結果を見た際、周辺環境が悪化していることを示すデータがあれば、人間関係でトラブルが起きていることを発信するSOSサインが問題行動として現れているのかもしれないといった視点で可能な支援を考えていくことができます」
Edv Pathには、アセスメント回答結果から支援が必要だと思われる生徒を自動で抽出する「アラート抽出」機能が備わっている。スクールライフノートとEdv Pathの併用により、生徒が必要としている支援をすぐに届けられる体制の強化が実現できた。
授業コンテンツで生徒の非認知能力を育成
Edv Pathには、非認知能力の育成を目指す授業コンテンツ機能も備わっている。同校では、学年やクラスのアセスメント結果から今後の教育課題を把握したうえで、授業コンテンツを用いた介入アプローチを実施していると風間先生は話す。
「アセスメント結果を確認し、クラスの課題をもとに学級経営の方針を見直したり、教員同士で生徒たちが身につけるべき資質能力について話し合ったりする時間が増えてきました。また、見つかった課題に対してEdv Pathの『授業コンテンツ』を総合的な学習の時間に活用することで、効果的なアプローチを実施していくことができるようになりました」
2023年12月には、進路指導の一環として、Edv Pathの授業コンテンツの1つである「自己探究」軸にした授業も実施された。この取り組みについて「生徒の職業理解を促す取り組みだ」と風間先生は語る。
「生徒がそれぞれ自分自身の興味関心を深堀りし、興味関心を活かした職業にはどんなものがあるのかを考えることで多様な職業を知るきっかけになればと思います。授業の最後には、生徒がEdv Pathの結果を見ながら現在地点を振り返り、自分のなりたい職業に就くためにはどんなスキルを高めるべきかを考えさせました」
授業を通じて生徒は自分の目標を言語化し、次回の授業でEdv Pathのアセスメントで測定される非認知能力の理解を深める授業を展開していくのだという。
学校・学級経営が新たな体制に
2023年11月、アセスメント結果を自動で分析し、クラスが現在どのような状況になっているのか、クラス内で誰がどのように悩んでいるのかを自動抽出する『集団レポート』機能がEdv Pathから新たにリリースされた。さらに、生徒のアセスメント結果の中からどの項目が悪化しているのかに応じた『ケース別の声かけポイント』の情報提供も開始されている。
このような機能の活用が「誰一人取り残さない学校」の実現を後押しすると藤崎校長は語る。
「『集団レポート』を用いて支援の必要な生徒を把握し、該当する生徒に対して『ケース別の声かけポイント』を活用しながら積極的な声かけをしていく風土を作っていくことで、誰一人取り残さない学校へ進化させていきたいです」
さらに、「Edv Pathのデータをクラス編成を検討する際の指標としても活用していきたい」という。
「これまでのクラス替えでは、学級のバランスや担任への負担なども加味したうえで、複数のプランから最終的な編成を決めてきました。しかし、その最終的な判断軸は我々の主観に頼らざるを得ない状況だったんです。Edv Pathが示す客観的なデータを用いることで、要支援の生徒のバランスを最適化できるようになると考えています」
Edv Pathの更なるアップデートに期待しているという風間先生。「『生徒1人1人に対するオーダメイドの支援』を充実させていきたい」と今後の抱負を語ってくれた。