2025.10.01 活用事例

「非認知能力の可視化から始まる学校づくり 〜子どもの力を本気で伸ばすカリキュラムマネジメントの実践〜」京都市立洛西陵明小中学校 研究開発部長 牧野嵩馬先生

2025年9月14日「未来の先生フォーラム」にて京都市立洛西陵明小中学校が登壇されていました。その中でお話しされていた内容をまとめましたので、ぜひお気軽にご覧ください。


開催概要

  • 日時:2025年9月14日(日)12:30〜13:30
  • 会場:桜美林大学 新宿キャンパス
  • テーマ:非認知能力の可視化を切り口に、学校教育目標の具体化とカリキュラム・マネジメント(カリマネ)をどう実現していくか

学校教育目標を共通認識にするために

洛西陵明小中学校は2025年4月に開校した義務教育学校。掲げる教育目標は「未来に向かってしなやかに伸び続ける」。
ただし、抽象的なスローガンにとどまると実践に落とし込みにくいため、牧野先生は「コンセプト化」という手法を導入した。

  • 3つの力に整理
    1. 困難なこともあきらめず挑戦し続ける力
    2. 新たな環境に自信をもって適応する力
    3. 未来像を描き、仲間と共に歩む力

この3つを授業(1時間単位)、単元、学級経営、さらには9年間の学びまで 一貫して意識することができるようにするためにもコンセプトに落とし込み共通認識を作っていくことで先生が変わっても子どもが途切れず育つ仕組みを整えた。


学力以外をどう可視化するか

非認知能力は点数化できないため、従来は「伸びているかどうか」が曖昧だった。そこで導入されたのが EdvPath(エドパス)

  • 10〜15分のアセスメントで75問に回答
  • 生徒個人の強み・弱みを即座にフィードバック
  • 学年ごと・学校全体・全国比較が可能
  • 結果を基に学級経営や授業改善に直結できる

この仕組みによって、例えば 忘れ物が多い児童に対しては「セルフマネジメント」の力が弱いと判明。そこで スケジュールシートを活用した自己管理の仕組みを導入したところ、行動改善が見られた。
教師も「取り組みの成果が数字で見える」ことで、職員会議での合意形成や次のアクション設計がスムーズになった。


授業・活動での具体事例

1. 道徳の授業 × セルフマネジメント

「節度・節制」の単元で、ただ道徳的価値を学ぶのではなく、忘れ物を減らす行動管理と結びつけて指導
子どもたちは「次はどうやって改善するか」を振り返りに書き込み、行動変容に直結させた。

2. 特別活動 × 自己開示

9学年縦割りの活動では、年齢差のある関わりを通して 「自己開示」する機会を意図的に設計。
自己紹介や異学年交流を繰り返すうちに、普段あまり発言できない子も少しずつ自分を語れるようになった。

3. 宿泊学習 × 他者信頼

小学6年生の宿泊学習では「他者信頼」をテーマに設定。
活動後の振り返りには「友達に頼ったら一緒にできた」「協力したら自信がついた」といった記述が見られ、非認知能力の成長が言葉として確認できた。

4. 総合的な学習 × グローバル体験

9年生の修学旅行では海外の人々との交流を通して、**「未来像を描く力」**を体験的に学習。
「英語をもっと勉強して話したい」「自分も国際的に活躍したい」といった前向きな意欲が多く出た。


教科学習での工夫

非認知能力は「道徳・総合・特活」に限らない。
教科学習でも「単元デザインシート」を配布し、以下を明確化している。

  • 学びの見通し(この単元でどんな力を伸ばすのか)
  • 途中での形成的評価とフィードバック
  • 振り返りによる自己認識

例えば数学の単元では、途中の小テストを活用して「自分はどこでつまずいているか」を生徒に自己診断させ、改善計画を立てさせる。
これにより「自分の学習をコントロールできる」という感覚が育ち、結果的に 知識・技能の定着率も向上した。


成果と気づき

  • データの可視化により「何を強化すべきか」が明確になり、職員会議での議論が活性化
  • 学力上位層と下位層を分ける要因として「GRIT(粘り強さ)」が強く影響していることが判明
  • 子どもの振り返り文章が「できた/できない」から「次はこうしたい」へと変化
  • 教員の属人的な取り組みから「学校全体の仕組み」へと進化

まとめに代えて

ここからは先生の公演を元に編集部が感じたこととなります。

今回は牧野先生の実践をご紹介していきました。「非認知能力を学校教育の中心に据える」ことで、抽象的な学校目標を子どもたちの行動や成長にまで落とし込む挑戦でした。
大きなポイントは以下の3つです。

  1. 学校目標をコンセプトに落とし込むこと
     「挑戦する力」「自己開示」「他者信頼」といった具体的な言葉に整理することで、先生も子どもも日常的に意識できるようになる。
  2. データによる可視化と対話の促進
     EdvPathを用いた非認知能力の測定は、教師の思い込みではなく根拠ある議論を可能にし、学校全体の共通言語を生み出した。
  3. 授業・特活・学級経営の中で意図的に育成すること
     「今日はこの力を育てよう」と言葉に振り返ることで、自己をモニタリングし意識して行動を変容することができるようになる

これから我々が考えるべきこと

今回の事例は「特別な学校だからできた」わけではありません。むしろ、どの学校でも応用可能なヒントが含まれています。
ぜひこの記事をご覧いただいた先生の皆様には下記の要素を念頭においていただけますと幸いです。

  • 学校教育目標を「コンセプト」に置き換えてみる
  • 非認知能力を評価・振り返る仕組みを作っていく
  • 教員一人の工夫に依存せず、学校全体で持続できる仕組みを作っていく

最後までお付き合いいただきありがとうございます。

京都市立洛西陵明小中学校でご活用いただいているEdvPathに興味をお持ちいただけた方は下記のリンクよりお気軽に資料をお取り寄せください。

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