
「アントレプレナー教育を通じて、学校でリアルな学びを」ー日本体育大学柏高等学校 教育研究部部長 熊井 允人
校内予備校の設置、柏市企業連携アントレプレナーシップ導入などの学校改革をリードしてきた熊井先生。身近な課題を発見し、解決に向けてアクションを起こす「何かのために何かをする」をテーマに、探究学習を通じた生徒の成長を見守り続けている。本記事では、同校での取り組み、Edv Pathの具体的な活用方法、熊井先生の今後の目標に迫った。
人物紹介
熊井 允人2011年、日本体育大学柏高等学校へ着任。現在は、高校3年生の担任と教育研究部の部長を兼務。同校における探究学習「柏市企業連携アントレプレナーシップ」導入の中心メンバーとして、コースや学校を超えた探究学習全般をリードし、学校改革に取り組んでいる。 |
学校紹介
学校情報住所:千葉県柏市戸張944在校生:高校1~3年生1,018名今回導入したクラス:高校1~3年生導入時期:2023年1月〜 |
学校改革の過程で見えてきた、新たな学びのカタチ
日本体育大学柏高等学校では、10年以上前から「校内予備校の設置」などの積極的な学校改革に取り組んできた。しかし、受験指導の限界点を目の当たりにしたことを機に、「学校でしかできない教育とは何か」を自問する時間が増えたと熊井先生は話す。
「数年前、学校教育における受験指導のあるべき姿に悩んだ時期がありました。各教科の勉強時間を計測しながら生徒に学習を促すなどの支援を行ってきたのですが、成績や受験結果が伸び悩んでしまったんですよ。その時に『受験勉強の記録やマネジメントのほかに、学校だからこそできることがもっとあるのではないか?』という疑問が浮かんだんです」
そんななか、部活動に参加している生徒の成績が伸びていることに気が付いた熊井先生。理由を分析した結果、「自らの課題に対して試行錯誤を重ねながら問題を解決するPBL(課題解決型学習)の考え方を取り入れた学習が重要なのではないか」という仮説にたどり着いたという。
「部活動を通じて成長している生徒の姿を見ているうちに、身近な課題解決のために何ができるのかを考え、具体的なアクションを起こせるようになることを目指すプログラムを導入したいと考えるようになりました。そこで改めて地元である柏市に目を向けてみると、ゴミ問題をはじめ、土地・人手不足など身近な地域社会にも課題が溢れていることに気付かされたのです。これが柏市の企業と連携したPBL学習を取り入れるアイデアに繋がりました」
柏市の企業と協力しながら探究的な学びを深めるプログラムを作り出していくなかで生まれたのが、現在同校で実施されている探究学習「柏市企業連携アントレプレナーシップ」だ。
地域連携教育プログラム「柏市企業連携アントレプレナーシップ」
「地元で実際に起こっている課題に取り組むからこそ、生徒たちが真剣になれるんです。学校だけでは学べない、実社会のリアルな課題と直面し、それをどのように乗り越えていくのかを学べるのがこのプログラムの特徴です」
地元の柏市の商工会議所と連携した探究学習プログラム「柏市企業連携アントレプレナーシップ」では、柏市の企業が抱える課題に対して、生徒と企業がタッグを組み、解決に向けたアクションを起こす。本プログラムの魅力について、熊井先生は次のように語る。
「例えば、あるグループは、『企業の担当者の方と話がしたいけど、どうして良いかがわからない』と悩んでいました。生徒たちは、直接訪問するのか、電話をするのであれば携帯と学校の電話のどちらから掛けた方がいいのかなどを自分たちで考えて問題を乗り越えていきます。実際に社会に出れば、同じような悩みに直面することになりますよね。社会と繋がることで、リアルな体験ができるのがこのプログラムの魅力の一つです」
探究学習で伸びた非認知能力の評価方法に
「柏市企業連携アントレプレナーシップ」に取り組むアカデミックフロンティアコースでは、生徒のメンタルケアの一環として年5回の二者面談を実施している。探究学習を通じた生徒の成長を評価するために、面談のなかで探究学習を通じた生徒の成長を振り返る時間を設けることにした。
しかし、実際に面談で活動の振り返りを始めてみると、非認知能力を評価することに対して難しさを感じるようになったという。
「普段から生徒の様子をよく観察している先生達であれば、生徒の非認知能力の成長についてしっかりと言語化して伝えられるはずだと考えていました。しかし、実際には生徒の変化を生徒に対して上手く伝えられる先生と、そうではない先生に分かれてしまったんです。このままではいけないと思い、先生の肌感覚に頼るのではなく、具体的に生徒の変化を測定する仕組みや指標が必要だと考え始めました」
この課題解決方法を模索するなかで熊井先生が出会ったのが非認知能力の測定を行う「Edv Path」だった。
データが学校のコミュニケーションを変える?
「Edv Pathを使うことで、これまで感覚的にしか捉えられなかった生徒の成長や困り感が客観的なデータとして可視化されるようになりました。面談の際には、Edv Pathの個人レポートの結果を確認しながら、数値の変化や要因について、生徒と一緒に振り返りを行っています」
<to あやぱんさんへ:この付近に画像を挿入できると理想的です>
Edv Pathのアセスメントツールを導入したことで、生徒の成長に関する客観的なフィードバックが実施できるようになった。また、会話が苦手な生徒に対してもレポートを用いて話をすることで、コミュニケーションが取りやすくなったという。さらに、生徒の非認知能力を視覚化するEdv Pathは、生徒の成長を促すツールとしてだけではなく、学年会議や職員会議における教員間のディスカッションにも活用することが可能だと語る熊井先生。
「学年会議の際に、それぞれのクラスや生徒についてディスカッションする材料としてEdv Pathのデータを活用しています。以前はお互いに気を遣ってしまって伝えづらかったことであっても、Edv Pathのデータが手元にあることで、客観的な議論がしやすくなったので、今までよりも積極的に発言する人が増え、活発な議論に繋がっていると感じています」
同校では、クラス間・学年間のデータ比較を行い、そこから得られた情報をカリキュラムマネジメントにも活かすことを目指している。
自分を振り返る習慣をEdv Pathで
「これからも引き続き、生徒が多くのことを学びながら成長していけるような取り組みにチャレンジしていきたいです。また、私個人としては、生徒全員が楽しみながら今後の人生を豊かにしていけるような活動を支援するモチベーターでありたいという思いで日々生徒たちと向き合っています」
さまざまな体験の場を提供できるようになった今、生徒自身が自らの取り組みを振り返る習慣を作っていくことが大切だと語る熊井先生。今後もアセスメントの回数に制限がない「Edv Path」を上手く活用し、生徒一人ひとりのペースに合わせた頻度やタイミングで内省を促していきたいと語ってくれた。