2025.07.14 活用事例

「目には見えづらい成長を可視化し、客観的な評価を目指す」ー日本学園中学校・高等学校 創発科  伊藤 悟史

日本学園に創発学を設置して以来20年間、6ヵ年教育に位置づけられたプログラムに携わってきた伊藤先生。「創発学を通じた生徒の成長をもっとフィードバックしてあげたい」とこれからの展望を語る。学習指導要領の改訂に伴い、高校への総合的な探究の時間として「創発科」を設置し、高校におけるプログラム実施内容や評価方法を模索し続ける伊藤先生の本音に迫った。

人物紹介

伊藤 悟史(いとう さとし)ー日本学園中学校・高等学校の「創発科」主任。中学部長を兼務。同学園でのキャリアは29年目となる。これまで、中学校における「創発学」のプログラム開発に尽力。現在は、2022年の現行学習指導要領施行に伴う「創発科」の設置で高校における探究作りに奮闘中。

学校紹介

学校情報住所:東京都世田谷区松原2丁目7-34在校生:209名(中学)、387名(高校)今回導入したクラス:中学校1~3年生、高校1~3年生導入時期:2023年7月〜

創造したものを発信する「創発学」

日本学園の探究メソッドのルーツは、20年前に始まった「創発学」に遡る。当時「学習は授業でのインプットで完結する時代であった」と振り返る伊藤先生は、同学で創発学が生まれた背景を次のように語る。

「学習をインプットで終えてしまうのでは生徒もワクワクしないと思うんです。インプットした知識を自分の中で編集し、意見や創造物として他者に発信させることが必要と考えていました」

6ヵ年教育のカリキュラム内に設置された「創発学」は、「創発=創造したものを発信する」をテーマに、伊藤先生と各クラスの担任によって具体化が進められてきたプログラム。伊藤先生は「創発学は五感を取り戻す体験学習からスタートする」と話し、さらに次のように続ける。

「生徒たちは、中学受験という厳しい競争を経て入学してきます。だからこそ、入学後はまず本来持っている『楽しい』という感覚を取り戻させ、学びを楽しめる状態に持っていくことが大切なんです」

生徒が『楽しい』という感覚を取り戻すためには五感を使うことが重要であると伊藤先生は考える。中学1年生の授業では、第一次産業の仕事現場に足を運び、自然の中でさまざまなものを五感で感じる体験から創発を始める。

総合的な探究の時間として「創発科」を設置

中学で創発学の取り組みが進む一方で、高校での「創発学」の設置はなかなか進まなかったという。しかし、2022年に学習指導要領が改訂されることが決定したことを機に、総合的な探究の時間として「創発科」を設置することになった。2020年には、伊藤先生を中心とした創発チームを結成。「創発科」設置までの2年間を準備期間とし、基本方針やプログラム内容の整理を始めた。

こうして開始となった「創発科」は中学校で実施している創発学でのメソッドを活用しながら、行事を通じて学びを深めるようなカリキュラム設計になっているという。

「単に行事を開催して終わりにするのではなく、事前に学習してから現地に赴き、見たり聞いたりという体験をする。それを自分の中で理解して成果物に落とし込んでいく。その一連の流れを通じて学びを得られるプログラムとなっています」

基本方針の1つとして校内で実施する定期試験において、各科目「創発問題」の出題が設置された。

「従来のテストでは、授業で学んだことを復習し、テストでアウトプットした時点で学びが完結してしまうんです。そうではなく、インプットした知識や教科から学んだ物事の見方・考え方を活かし、自ら考えさせるのが『創発問題』の特徴です」

「教科で身につけた力を使えば世界は違って見える」ということを教科横断的に教えていきたいと語る伊藤先生。「創発科」の設置だけに留まらず、教科を超えて学校全体で探究を推進する体制作りを目指している。

目に見えない力を目に見えないままにしてきてしまった

創発学を展開していく中で見えてきた課題もある。それは、生徒の成長度合いをどのように評価するのかという問題だ。「創発学を通じて伸びた生徒の力が目に見えないままになってしまっている」と語る伊藤先生。中学校のプログラムにおける評価制度を改善したいという強い想いを抱いている。

「きっと創発学で体験したことが活きているのだろうという推測や、中学から創発学を受けてきた生徒の様子を観察していて感じる手応えなど、どうしても主観的かつ漠然とした評価になってしまうんです。今でもその状態を脱しきれておらず、課題感があります」

「育てたい生徒像」はあるものの、それを達成するために具体的にどのような力を生徒に身に付けさせるべきなのかが定義されていないことが当時の問題であったという。日々の業務や連続する行事の中で、教員が授業の振り返りをすることや生徒の成長をフィードバックする時間を確保できていない現状がある。

Edv Pathで生徒の成長を可視化し、評価へ繋ぐ

生徒の成長をより客観的な視点で評価していくため、創発チームは生徒にどのような力を身につけさせたいのかを明確にすることにした。

「まずは、学校としてどこに向かうのかを整理することから始めました。まずは、全教員でどんな生徒になってほしいのかと話し合い、それを達するに必要な育成すべき能力をまとめました」

「授業を実施したらおしまい」にするのではなく、取り組みを通じた生徒の変化をきちんと把握し、次の取り組みや次年度への改善に活かしていける状況が理想的だ。そのためには、定期的に生徒の状況を見える化するためのアセスメントが必要となると語る伊藤先生。年度末の成績評価についても改善の余地があるという。

「昨年度の探究の成績評価は、生徒に自己評価させた内容をベースに、授業者が個別の評価を行いました。授業者の主観による評価は客観性に欠けてしまうこともあり本当にこれで良いのか?と疑問を感じていましたが、これしか方法がなかったんです」

Edv Pathを活用すれば、定期的なアセスメントを実施できるほか、探究の取り組み情報を登録することで年度末にデータをもとにした個別の探究評価を行うことも可能だ。目には見えないスキルを見える化することで、生徒へのフィードバックにも活用していきたいと伊藤先生は語る。

仕事と生活の双方を楽しめる生徒へ育てる

日本学園中学校・高等学校は、2026年度から明治大学の系列校となり、共学化することが決まっている。

「明治大学に生徒を送ることは、あくまで生徒の進路における手段の1つであり、教育が目指す最終的な目標ではありません。それ以上に、学ぶことに対して楽しさを感じられる生徒に育ててあげたいです」

「学びも遊びも楽しめる生徒、最終的には仕事もプライベートも楽しめる人間になっていくことが本来あるべきなのではないでしょうか」と学校教育があるべき姿について語った。

ご相談・お問い合わせを
お待ちしております

Edv Pathニュースに登録しませんか?

Edv Pathニュースに登録しておけば、教育現場で使えるお役立ちコラムの情報や、Edv Pathに関する最新情報をお届けします。 今すぐにEdv Pathを導入したいという方以外の教育事業者の皆様でもお気軽にご登録ください!

Edv Pathニュースに登録しませんか?

Edv Pathニュースに登録しておけば、教育現場で使えるお役立ちコラムの情報や、Edv Pathに関する最新情報をお届けします。 今すぐにEdv Pathを導入したいという方以外の教育事業者の皆様でもお気軽にご登録ください!