2025.05.07 活用事例

「教育効果を評価することで、学校が変わり、生徒自身も変わる」ー埼玉県立小川高等学校 教頭 岡本 敏明

埼玉県立小川高等学校の探究学習「おがわ学」が設置された2019年から5年間にわたり、プログラム作りに尽力されてきた岡本先生。「客観的な評価をし、生徒一人ひとりの成長を大切にしていきたい」と今後の展望を語る。本記事では、地域と学校と繋ぐコーディネーターとして尽力してきた岡本先生の苦悩や葛藤に迫る。

人物紹介

岡本 敏明(おかもと としあき)ー埼玉県立小川高等学校の教頭。埼玉県立総合教育センター、高校教育指導課で指導主事を経験。島根県立隠岐島前高等学校で主幹教諭として、地域と連携・協働した探究活動やカリキュラムマネジメントに取り組み、埼玉県生涯学習推進課指導主事へ。小川高等学校で地域探究「おがわ学」プロジェクトに参画し、2022年から同校教頭となる。

学校紹介

学校情報住所:埼玉県比企郡小川町大塚1105在校生:528名今回導入したクラス:高校1~3年生導入時期:2023年7月〜

隠岐島前での学びを「おがわ学」に活かす

2018年、岡本先生は島根大学で地域コーディネーターの役割や取組について学び、島根県立隠岐島前高等学校での探究学習に携わるようになる。探究の実施について「何をやるかではなく、何のためにやるのかという目的が重要」との考えを示す岡本先生は、当時学んだことについて次のように語る。

「隠岐島前高校でカリキュラムマネジメントをするなかで、生徒たちにとって楽しく、学びある探究にするためには、まず教員が楽しく学び続けることが大切だと気付かされました。それから、探究を通じた成果物が良かったかどうかではなく、そこに行き着くまでのプロセスを内省することこそが大切だということが1番の学びでしたね」

翌年の2019年には、埼玉県立小川高等学校が文部科学省「地域との協働による高等学校教育改革推進事業(地域魅力化型)」の指定を受けることとなった。そこで、島根県での学びを活かすべく、同校での探究作りを任されることとなった。島根県での経験を活かしながら準備に取り組む過程では、苦労も少なくなかったという。

「ゼロから授業を作っていくためには、学校全体で協力することが欠かせません。当時は、他の先生と連携を高めるために、とにかくコミュニケーションを多く取ることを意識していました。研修会を開きながら、管理職の先生とともにトライアンドエラーで授業作りを進めていきましたね」

小川高等学校の探究学習は、試行錯誤の末に現在の『おがわ学』としてのカリキュラムへと成長してきたと岡本先生は振り返る。

コンテンツではなくコンピテンシーで繋ぐ探究へ

『おがわ学』の設置後は、当時の教頭が作成した計画書をベースに授業を実施。コンテンツごとに、うまくいったこと、うまくいかなかったことを整理してPDCAを回し続けてきた。しかしその過程で、ある課題に直面したと岡本先生は語る。

「学習指導要領の目標、教科や『おがわ学』での探究の目標、さらにはあらかじめ決められたコンテンツの内容に縛られてしまい、授業の自由度が低くなってしまったんです。授業を実施する教員も、どこか窮屈さのようなものを感じているような状況でした」

「地域の特産物を取り上げるなどの決められたコンテンツだけで『おがわ学』を進めようとしていたことが1番の失敗だった」と話す岡本先生。『おがわ学』では、生徒が地域課題を解決するためのアイデアをまとめることを学びゴールに置いていた。しかし、生徒の提示したアイデアの多くはスケールが大きく、実現可能性に乏しいものであったことに課題を感じていたという。

そこで2022年に教頭として赴任してからは、生徒の資質能力を育成するため、コンテンツに縛られない『おがわ学』へと方針転換を行った。

「これまでの探究は、コンテンツ頼りで実践を伴うものではありませんでした。2022年度からはその方針を見直し、生徒の資質能力に着目した、自由度の高い内容に変更したんです。それによって先生が楽しみながら授業できるようになり、生徒の姿勢も変わってきたと感じているところです」

生徒の変化を客観的に見える化する

『おがわ学』では、取り組みを通じた生徒の変化を「高校魅力化評価システム」を用いて評価してきたという。

「当初、育成したい生徒像に基づいた10の能力を設定し、ルーブリックを作成しました。しかし、校内では、この指標の活用がうまくできずに形骸化してしまっているのが現状です。一方で、効果測定としては『高校魅力化評価システム』を対象学年で3年間実施し、経年変化などから分析をしてきました」

測定結果を読み取ると、3年間でだんだんと数値が向上していくことや、3年次になると他の地域よりも測定の数値が全般的に高くなっていることがわかったという。この結果から、岡本先生は「取り組みの効果を測るためには継続的な評価が必要である」と考えている。

「3年間の経年変化に着目した際に、3年次の成長が見られたんです。『おがわ学』は、2020年度後半から2021年度にかけて実施してきたカリキュラムです。当時の3年生を中心に実施してきているからこそ、3年次の変化が『おがわ学』による効果だと確信を持てたのです」

3年間、継続的に調査をしてきたことが経年変化や他校との比較など、さまざまな角度のデータの収集・分析に繋がった。それにより、『おがわ学』を通じて生徒がどのような成長をしているのかを客観的に把握することができたという。

全体評価から生徒の個別評価への落とし込み

これまでの効果測定では「生徒個別や取り組みごとの評価ができていなかった」と語る岡本先生。これからの『おがわ学』の評価の在り方について次のように語った。

「年1回の調査を継続的に実施したことで、『おがわ学』の全体評価はできるようになりました。ただし、まずは全体の傾向を掴むことが重要ではあるものの、生徒個々の変化や探究の取り組みごとの変化も見ていく必要もあるのではないかと感じています」

Edv Pathでは、5分程度のアセスメントを通して、生徒個別の状態を把握や、クラスごとの結果の違いの比較も可能だ。3年間の文部科学省の事業を通じて『おがわ学』全体の効果を見取ることができてきたからこそ、今後はEdv Pathでより生徒個々人に着目した評価をしていきたいと岡本先生は話す。

評価が学校経営や学級経営を変える

Edv Pathの測定結果を見た岡本先生は「指導と評価の一体化を進めるべきだ」と語る。埼玉県が実施した学力状況調査の結果によると、学校・学級経営が学習方略や非認知能力等を媒介して学力向上に繋がるという。岡本先生は、同調査の結果を踏まえて次のように続ける。

「探究の取り組みが改善されれば、クラス経営も良くなっていくと思うんです。今後は、クラス間での差を見取り、数値が上がっているクラスを受け持つ先生のノウハウを積極的に共有していければと思っています」

岡本先生は「非認知能力を見える化し、そのデータを組織改善・教員の意識改革に活かしていくべき」と語る。クラス経営を担任だけに任せるのではなく、学年や学校全体で検証しながら進めていくためにEdv Pathの結果を活用していきたいと今後の意気込みを語った。

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