
「探究を通じて広い世界と繋がれる機会を届けていく」ー茨城県立水海道第一高等学校 キャリア探究部 緒方 響
「最初は右も左もわからず、戸惑いながらのスタートでした」そう語るのは、茨城県立水海道第一高等学校のキャリア探究部で探究学習を牽引する緒方先生だ。探究学習との出会いや、探究を進めるなかでの心境の変化について伺った。
人物紹介
緒方 響(おがた きょう)ー茨城県立水海道第一高等学校に初任校赴任し、現在5年目となる。専門科目は生物。2022年度に1年次の探究学習のチーフを務め、現在はキャリア探究部にて同校の探究学習を計画・推進している。 |
学校紹介
学校情報住所:茨城県常総市水海道亀岡町2543在校生:468名今回導入したクラス:高校1年生、高校2年生導入時期:2023年7月〜 |
戸惑いながらスタートした探究学習
茨城県立水海道第一高等学校では、2022年度の新課程を皮切りに探究学習を本格的にスタートした。初年度では、探究学習のチーフという立場で授業の立ち上げに携わってきた緒方先生。初めての試みに対して、最初は戸惑いが大きかったという。しかし、初年度には本校が設立されている常総市を豊かにするにはどうすればよいか、というテーマにした探究を担当し、次第に探究学習の面白さに気付かされる。
「受験に向けた勉強とは異なり、探究学習では自分の興味や好きなものを深堀りしながら学んでいきます。1つの物事を探究する力は生きていく上で欠かせない力だと感じるようになりました」
自ら手を挙げ、2年目の探究がスタート
同校では2023年度、探究学習に特化した校務分掌『キャリア探究部』を設置。1年目は右も左もわからない中で試行錯誤の連続だったが、1年目の取り組みの中で探究学習の可能性を感じた緒方先生は、『キャリア探究部』に自ら志願したという。
「現在の校長は民間公募によって本校の校長に就任した経緯があり、新たな視点から学ぶことも多いんです。そんな校長のもとで探究学習に携わるのは貴重な機会だと感じました」
今年度の探究学習では『海高式探究プログラム』と称した民間企業5社とのコラボレーション授業を実施している。外部人材が探究学習に参画することについて、緒方先生は次のように話す。
「企業の方に年間を通じて伴走していただくことで、クオリティの高い学びを生徒に提供できると思っています。企業で働く方の進め方などを見て教員が学べることも多いんですよ」
生徒は、「アート・コミュニケーション」「ソーシャルイシュー・コミュニティ」「アントレプレナーシップ・マーケティング」「デジタル・イノベーション」「ネイチャー・サイエンス」の5つの分野の中から自身の興味関心をもとにコースを選択し、専門的な学びを深めている。
探究の学びを評価することの難しさ
企業とのコラボレーションなどを力強く進めている茨城県立水海道第一高等学校。同校では探究学習の取り組み評価をどのように実施しているのだろうか。
「昨年度は、探究学習の初年度だったこともあり、生徒自身による活動の振り返りは行いましたが、教員による評価はできていなかったというのが実情です。すべてのグループや生徒の活動を細かに見たり、教科学習のように能力を可視化したりすることが難しいので、探究学習の評価方法については課題を感じています」
現在も、学習活動の評価や生徒へのフィードバックの手法を模索中だという。
生徒の変化や成長を見える化したい
2023年度、企業とのコラボレーションを軸に大幅に内容を刷新した同校の探究学習。緒方先生は「取り組みを通じた変化や身につけた力を目に見える形にして生徒に還元したい」と話し、さらに次のように続ける。
「探究学習の学びや経験から、どんな力が身についたのかが生徒自身の中で明確になれば、総合型選抜などにも自信を持って臨めるはずです。だからこそ、探究学習を通じた生徒の成長をしっかりとフィードバックしていきたいと考えています」
茨城県立水海道第一高等学校では、育みたい生徒像として『正解のない未来に自分で道を切り拓いていける生徒』を掲げている。探究学習の学びのプロセスでは、まさに生徒が主体的に課題を解決していく力や行動が求められる。
「今は生徒にさまざまな体験の機会を与えていますが、いずれは生徒が自らの興味関心から行動し、学んでいくようになってほしいですね。そのためにも生徒の成長や変化を見える化していく必要があると考えています」
同校では今年度「Edv Path」を導入。簡単なアセスメントを実施し、生徒1人1人の成長や変化を見える化することで生徒へのフィードバックの実施を目指している。
探究学習に関わることで自身の学びにつながる
「今年度行っている『海高式探究プログラム』は、今後本校の大きな特色の1つになっていくだろうなと考えています。その他にも、生徒に対してさまざまな学びの機会や体験を与えていく予定です」
探究学習を通じて、今後どのような教育を届けていきたいかを尋ねると、緒方先生は次のように答えた。
「学校という枠にとらわれることなく、広い世界の人と繋がれるような機会を提供していきたいですね。さまざま人と関わりながら多様な経験をしていくことで、生徒の視野は広がっていきます。そして、最終的には成長にも繋がっていくと信じています」
学校の外との関わりを持つことは、教員の成長にも繋がると話す緒方先生。最後に、「これからもより良い探究学習のプログラムを創っていきたい」と今後の展望を語ってくれた。
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