2022.06.03 探究学習

【探究学習】高校で始まる「総合的な探究の時間」で何をすればいいの?

2022年度から始まった「総合的な探究の時間」

高校では、2022年度より探究学習を軸とした教科が新設されました。生徒に「知識や技能」を身に付けさせるだけではなく、「目の前の課題を様々な方法で調査・理解し、自分の力で考える」という目に見えない学力の育成が重要になってきています。こうした力を身につけるための学習方法として「探究学習」が注目されています。

今回は、「探究学習」がどのような授業か、何を評価していけばよいかについて、Edv Pathでの事例を交えながらご紹介していきます。

探究学習とは?

文部科学省は、探究を「問題解決的な学習が発展的に繰り返されていく」過程であると定義しています。「総合的な探究の時間」は生徒個々の課題設定に対して、生徒が主体的に学習に取り組んでいく教育プログラムとして設置されました。

つまり、文科省の掲げる「生きる力を育む教育」を推し進めるといった学校教育における重要な役割を担っているのが探究学習なのです。

総合的な学習の時間と総合的な探究の時間の違い

旧科目にあたる「総合的な学習の時間」と新科目「総合的な探究の時間」は一体何が異なるのかについて解説いたします。平成21年3月の高等学校学習指導要領には以下のように明記されています。

総合的な学習の時間

第1 目 標
横断的・総合的な学習や探究的な学習を通して、自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育成するとともに、学び方やものの考え方を身に付け、問題の解決や探究活動に主体的、創造的、協同的に取り組む態度を育て、自己の在り方生き方を考えることができるようにする。

引用:文部科学省「高等学校学習指導要領(平成21年)」

つまり、「総合的な学習の時間」というのは、課題解決能力や主体的な学びを育むことを目的とした科目として設定された授業でした。現行の学習指導要領改訂では、「総合的な学習の時間」の意義を考えるべく、授業名を変更して「総合的な探究の時間」としました。「総合的な探究の時間」に関して、学習指導要領では以下のように明記されています。

総合的な探究の時間

第1 目 標
探究の見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して、自己の在り方生き方を考えながら、よりよく課題を発見し解決していくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 探究の過程において、課題の発見と解決に必要な知識及び技能を身に付け、課題に関わる概念を形成し、探究の意義や価値を理解するようにする。
(2) 実社会や実生活と自己との関わりから問いを見いだし、自分で課題を立て、情報を集め、整理・分析して、まとめ・表現することができるようにする。
(3) 探究に主体的・協働的に取り組むとともに、互いのよさを生かしながら、新たな価値を創造し、よりよい社会を実現しようとする態度を養う。

引用:文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年)」

2022年度から実施される「総合的な探究の時間」は、「生きる力」を主軸に、社会で求められる力の育成を強く求めるようになっています。課題発見から解決までの能力や自分自身の理解、探究学習を通じてあたらな価値の創造と未来への意識を持たせるなど、「総合的な学習」と異なり、「総合的な探究」で育成された能力を用いて教科教育に生かすほか、社会で活躍するために活用することを目的にした授業になっています。

では、「総合的な探究」が導入されることで学校教育の何が変わるのでしょうか。

現行、学習指導要領において明記された「総合的な探究の時間」では、これまでのように課題発見から解決までの能力や主体的な学びを育むという点は継続されています。

それらに加え、探究学習では「資質・能力」の育成も行うことが明記されています。それだけでなく、思考力・コミュニケーション能力などの能力の育成や職業や自己の進路に関する学習を行い、自己理解や将来の在り方生き方を考えるなどの学習活動も行うべきであると明記されています。

変化の激しい今日の社会を生き抜くための「資質・能力」の育成を学校に求める現行の学習指導要領において、その軸となる科目が「総合的な探究の時間」として設定されたということになります。

探求学習の実施方法

今日実践されている探究学習では大きく2つのテーマ設定がされています。

テーマ設定⑴自己探究

第一のテーマとして自己探究が挙げられます。

自分自身の過去の振り返りや未来に向けたキャリアプランの設計などを軸とした自己探究課題を設定したワークに取り組みます。例えば、ライフチャートを作成することを通じた自分自身の興味関心を探究するワークや、キャリアプランと進路の関係性を見つめていくワークなど様々な形で実施されています。

テーマ設定⑵社会課題解決

第二のテーマとして社会課題解決が挙げられます。

SDGsを中心とし、社会課題を探究学習のテーマに設定していきます。生徒が個々の興味関心に応じてテーマを設定して探究学習を進めていきます。

個人だけではなく、グループでの学習なども取り入れるほか、当事者やNPO団体による講演などを通じたリアルを学び、生徒が社会を知ることも促進することが可能です。

授業デザインのポイント

文科省は、探究学習のプロセスの基本は「①課題の設定、②情報の収集、③整理・分析、④まとめ・表現」であるとしています(※)。

多くの学校では、これらの探究学習におけるサイクルを回す形で授業がデザインされています。

⑴グループ内でSDGsのテーマで関心があるものを選択する
⑵選択したテーマの中でどのような社会課題があるのかを調査する
⑶調査結果を持ち寄り、グループとしてより探究を進める課題を1つに絞る
⑷設定したテーマについて調査・分析を行う
⑸得た様々な情報を元に、発表資料をまとめる
⑹発表会を通じてプレゼンテーションを行う

例えば、上記のような流れで授業が展開されていきます。生徒は、自分自身の興味関心を通じてテーマを設定し、その背景にある様々な社会問題を発見することを通じて探究学習を深めていきます。

※引用:文部科学省(2018)「【総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説

事例紹介

新設「総合的な探究の時間」に対し、各学校がどのような探究学習をデザインしているのかについてご紹介します。

東京都私立中高一貫校での事例

東京都内の私立中高一貫校のA校では、一貫校の特徴を活かした6年間の段階的な探究プログラムを実践しています。

A中学校では、デザイン思考を中心とした探究学習のサイクル実践に向けた準備を行います。また、中学1年生では、探究学習の基礎学習として弊社サービス「EdvPath」を活用した「自己探究」を軸とした心構え作りを並行して実施しております。過去の自分を見つめ直すカリキュラムから始まり、最終的には未来へと視点を広げる学習です。ここでは、グループワークを積極的に活用したアクティブ・ラーニングも取り入れたカリキュラムデザインとなっています。

A高校では、中学3年間での学びを踏まえて本格的な探究学習を実施します。自らの興味関心や課題意識に応じてテーマや問いを設定し、より深い探究を目指すカリキュラムがデザインされています。定期的なワークショップや様々なゲストをお迎えした講演を実施し、生徒の「好き」や「興味」を発見するためのデザイン設計がされています。

神奈川県私立高校での事例

神奈川県内の私立高校のB高校では、3年間の探究プログラムを新設しました。

B高校では、週2回の「総合的な探究の時間」を活用したグループでの探究学習を実施しています。グループでは、共通の社会課題を設定して学びを深めるカリキュラムデザインを実践しています。

3年間を通して探究学習のPDCAサイクル「課題設定→調査→分析→まとめ」を回しながら学習を進め、卒業時には生徒個々の興味関心に応じた課題を設定し、小論文として総まとめを行います。

現行の学習指導要領の元、各校が探究カリキュラムをデザインし授業を実践しています。しかし、探究学習では何を評価すれば良いのかという点に課題を抱えているのが現状です。最後に探究学習での評価をどうすれば良いのかについてご紹介します。

探究学習で何をどう評価するのか

文科省は学校教育が育成を目指す能力として、教育の3本柱をを掲げています。

1.知識・技能
2.思考力・判断力・表現力
3.学びに向かう力・人間性

従来の評価では、「1. 知識・技能」を中心とした学力評価が行われてきました。定期考査などで明らかにできるのは3本柱の1つ目に当たる「1. 知識・技能」になると考えられています。

探究学習の目的は、生徒や子どもたちの探究心を育てることにあります。しかし、それらの評価方法はこれまで教員による主観に頼ってきました。つまり、「思考力・判断力・表現力」や「学びに向かう力・人間性」といった生徒の内面に注目することが求められています。

これらの「思考力・判断力・表現力」や「学びに向かう力・人間性」というのは、非認知能力と呼ばれ、探究学習の評価の視点として間接的に活用することが可能です。

※非認知能力とは、GRIT(やり抜く力)や対人関係スキル、自己や他者認識能力、セルフマネジメント力の総称です。これらの能力を伸ばすことで、学力以上に大事である「人」として生きる力が育まれ、未来ある子どもたちの将来が豊かになると考えられています。

探究心を育んだ結果として、生徒の学習意欲や進路や未来への希望、モチベーションの向上を目指しています。したがって、探究学習によって育まれた探究心は、結果的に非認知能力の向上を呼び起こしていると考えられ、探究学習の教育評価として非認知能力の測定を活用することも可能です。

実際に学校現場では、アセスメントを使用した非認知能力の可視化や、生徒の書いたポートフォリオから評価を行うなど様々な方法が取り入れられています。

まとめ

今回は、「探究学習」はどのような授業なのか、何を評価していけばいいのかについて、Edv Pathでの事例を交えながらご紹介いたしました。

今回の要点としては、

・探究学習は、生徒個々の課題設定に対して、生徒が主体的に学習に取り組んでいく教育プログラムである
・テーマとしては、①自己探求型学習と②社会課題解決型学習の大きく2つに分けられる
・探究学習は目に見えない能力(非認知能力)が育成されるため評価が難しく、現状はアセスメントやポートフォリオによって評価されている

となります。

変化の激しい時代を生き抜くための「資質・能力」の育成を目指すために新設された「総合的な探究の時間」をどのように進めていくのかという点に課題が残る現状です。また、探究学習の評価として何を軸に実施していくことが可能なのかについてもご紹介しました。

Edv Futureでは、アセスメント・アンケートの回答結果から、非認知能力の評価を行います。その調査結果に基づき「総合的な探究の時間」を活用して「非認知能力」を育成することが可能なカリキュラムを提供しております。

未来ある子どもたちがこれからの変化の激しい社会を生き抜くために必要な「生きる力」を育成するために支援いたします。

ご相談・お問い合わせを
お待ちしております

Edv Pathニュースに登録しませんか?

Edv Pathニュースに登録しておけば、教育現場で使えるお役立ちコラムの情報や、Edv Pathに関する最新情報をお届けします。 今すぐにEdv Pathを導入したいという方以外の教育事業者の皆様でもお気軽にご登録ください!

Edv Pathニュースに登録しませんか?

Edv Pathニュースに登録しておけば、教育現場で使えるお役立ちコラムの情報や、Edv Pathに関する最新情報をお届けします。 今すぐにEdv Pathを導入したいという方以外の教育事業者の皆様でもお気軽にご登録ください!