
【セミナーレポート】生徒の主体性を引き出し「成長実感」を育むコミュニケーション実践
2026年5月21日、Edv Future株式会社は「生徒の主体性を引き出し『成長実感』を育むコミュニケーション実践」をテーマにオンラインセミナーを開催いたしました。
予測困難な時代において、生徒の「非認知能力」の育成は学校教育における重要課題の一つとなっています。しかし、「主体性」や「やり抜く力」といった目に見えない能力をどのように評価し、いかにして生徒の「成長実感」へと繋げるべきか、頭を悩ませている先生方も多いのではないでしょうか。
本セミナーでは、2名の先生をお招きし、生徒の強みを引き出す対話の技術や、校内における非認知能力の「モノサシ(共通言語)」の統一方法、具体的な面談での活用事例について泥臭くも再現性の高い実践知をご共有いただきました。
【ご登壇者紹介】
- 中林 洋賀 先生(英心高等学校 伊勢本校 教頭)
- 細川 和哉 先生(日本体育大学柏高等学校 教員・硬式野球部顧問)
第1部:非認知能力の「共通言語化」と自己効力感を高める対話
英心高等学校 中林 洋賀先生
三重県に位置する英心高等学校の中林先生からは、非認知能力を育成するための「組織的なアプローチ」と、生徒の心を動かす「コミュニケーション」についてお話しいただきました。
1. なぜ、いま学校に「共通のモノサシ」が必要なのか?
教科指導などの「認知スキル」には専門の免許状や指導書があり、論理的な指導体系が整っています。一方で、挨拶や思いやり、主体性といった「非認知スキル(TO BE)」については、教員個人の教育原則に頼りがちで、校内での明確な体系や共通理解が不足しているのが現状です。
中林先生は、非認知スキルの成長を可視化し、意図的かつ再現性のある教育を実現するために、校内で「共通のモノサシ(共通言語)」を持つ重要性を強調されています。英心高等学校では、「7つの習慣」と「Edv Pathで測定可能な9つの非認知能力」をモノサシとして採用しています。
教員間でこのモノサシを共有することで、生徒の成長を明確に把握・共有できるようになり、生徒自身も新しい概念を体系化しやすくなります。
2. 主体性を引き出す4つのコミュニケーションアプローチ
生徒が成長していても、本人がそれに気づかない「成長と成長実感の乖離」が起こることがあります。中林先生は、生徒の自己効力感を高め、この乖離を埋めるために以下の対話を意識されています。
・「ジョハリの窓」を意識した客観的フィードバック
Edv Pathの自己アセスメントは「自分が見た自分の姿」です。教員が「あなたにはこんな素晴らしい強みがある」と伝えることで、生徒が気づいていない「盲点の窓」「未知の窓」を開き、明確な成長実感へと繋げます。
・「褒める」ではなく「認める」
アドラー心理学に基づき、上から目線の評価(褒める)ではなく、「勇気づけ・尊敬・感謝」を込めた「認める」声かけを徹底し、自信と自立を促します。
・入学前からはじまる「居場所づくり」
「信頼していない人からの言葉は響かない」という前提のもと、入学前面談から関係構築をスタート。入学後1週間は生徒の居場所づくりに徹底し、教員との小さな約束を守るなどの「スモールステップ」を意図的に設けて認めていきます。
・感情の「メタ認知」を支援するプラスストローク
手帳や日記の記述に対し、肯定的な反応(プラスストローク)を返すだけでなく、「それは歓喜ですね」「不安だったのですか?」と問いかけることで、生徒自身が言語化できていない感情をメタ認知させ、主体的な行動(主体的反応)へと導きます。
3. 学校独自の取り組み「マイチャレンジ」
英心高等学校では、自己効力感を上げ、成長実感をもたらす年間目標「マイチャレンジ」を実施しています。
・目的: 秘めた個性の発見、自己効力感の醸成、そしてGRIT(やり抜く力)の育成。
・実践: マイチャレンジカードをいつでも見える場所に掲示し、達成プロセス(「自己受容」→「メタ認知」→「言語化」→「自己表現」)をEdv Pathのコメントと紐づけながら回していきます。
4. Edv Pathを用いた具体的な活用シーン
・進路面談シートでの活用:
進路活動状況だけでなく、Edv Pathの数値と「7つの習慣」をセットで振り返ります。目標を2〜3個の「最重要目標」に絞り込み、「どの項目を伸ばすか」を生徒自身に考えさせます。
・強みの言語化と模擬面接:
自分の強みを言葉にできない生徒に対し、Edv Pathの診断結果の「タイプ」や「強み」のコメントを手帳(フォーサイト)に書き写させ、具体的な経験談と結びつけることで説得力のある自己PRを作成します。
・保護者のパラダイムを変える「三者懇談(三方よし)」:
三者懇談では、生徒自身がEdv Pathの個人表を使って保護者にプレゼンを行います。教員も客観的エビデンス(データ)を元に生徒の良さを伝えることで、保護者が子どもの成長に驚き、力強い応援者へと変化します。
第2部:若手教員が挑む「内面の可視化」と対話の質の変革
日本体育大学柏高等学校 細川 和哉先生
教員3年目、担任2年目で硬式野球部顧問でもある細川先生からは、若手教員ならではの葛藤と、Edv Pathを活用した生徒との「対話の質の変化」について定性的な観点からお話しいただきました。
1. 担任1年目の反省と、Edv Pathとの出会い
細川先生は担任1年目を振り返り、生徒の「やりたいこと」よりも教員としての「やってほしいこと」を優先してしまい、結果的に生徒の主体性を奪っていたのではないかという葛藤を抱えていました。また、生徒との年齢差が近いため、距離感の調整にも難しさを感じていました。
そのブレイクスルーとなったのがEdv Pathです。生徒が「どこまでやりたいのか」という目に見えない内面の状態が可視化されたことで、深い生徒理解の助けとなりました。
【ポイント:データを盲信しない】 「数値は生徒のその日の気分や入力状況によって変動するもの。数値をそのまま評価に使うのではなく、面談やクラス運営、日常の雑談における『参考』や『対話のきっかけ』として活用することこそが、Edv Path導入の重要な意義です」
2. 「SEL/EQ」と「自己肯定感」に着目した自己対話の促進
細川先生は、生徒の「自己対話」を深めるために、Edv Pathの数ある指標の中でも特に「SEL/EQ(社会的・情動的学習/心の知能指数)」と「自己肯定感」の2つの数値に注視して面談を行っています。
3. 1年目と2年目における運用の変化(挑戦)
細川先生は、学年や自身の経験値に合わせてEdv Pathの開示方法を工夫し、対話の質を劇的に向上させました。
・1年目(2年生担当時):結果を「教員の頭の片隅」に留める
データを生徒には直接見せず、教員が記憶した上で面談に臨んでいました。しかし、「最近どう?」といった抽象的な質問になってしまい、生徒の本心を引き出しきれない課題がありました。
・2年目(3年生担当時):結果を「生徒に見せる」ことで対話の質を向上
反省を活かし、生徒に直接Edv Pathのデータを提示する形に挑戦。「A君にはこういう強みがあるよ」「現状はこんな状態だね」と、具体的なデータを起点に会話をスタートさせることで、生徒自身も客観的に自己を把握しやすくなりました。結果の数値だけでなく、その背後にある「プロセス(過程)」を共有することで、より深い自己対話と主体的な行動が生まれています。
4. 「主体性」と「協調性」のバランス指導
面談を通じて生徒の主体性を引き出す一方で、細川先生は「主体性だけが先行すると、クラスや社会という集団では成り立たなくなる」とも指摘します。生徒一人ひとりの個性を尊重しつつも、社会に出る一歩手前の指導として、クラス集団における「協調性とのバランス」の大切さを伝える実践をリアルタイムで行っています。
まとめ:生徒の「内面」に向き合うことが、主体性を育む第一歩
今回のセミナーでは、アプローチやキャリアの異なる2名の先生からお話を伺いましたが、共通していたのは「Edv Pathのデータを単なる評価シートにするのではなく、生徒と深く対話するための強力なツール(共通言語)として活用している」という点でした。
生徒自身が自分の非認知能力を客観的に知り、教員や保護者から適切な「承認(認める声かけ)」を受けること。このプロセスこそが、生徒の「成長実感」を生み出し、次の主体的な行動へのエネルギーとなるのです。
本セミナーのアーカイブ動画を限定配信中!
また英心高等学校で活用されている面談シートをご共有いたします。
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