
「継続することで、生徒の変化を実感できました!」ー十文字中学校・高等学校 第一学年主任 森 勝寛
少子化に伴う生徒数の減少に加え、生徒の抱える課題の多様化にも悩まされてきたという心の内を語った森先生。十文字学園全体で探究学習の導入を進めている中で、森先生は中学校1年生における探究学習カリキュラム作りという前例のない新たな取り組みに尽力している。今回は、そんな森先生がこれまでどのようにして探究学習というテーマに向き合ってきたのか、また、Edv Pathの教材を活用した結果、学内でどのような変化が見られたのかに迫る。
人物紹介
森 勝寛(もり かつひろ)ー1998年、十文字中学校・高等学校に入職。中学1年学年主任・数学科。校内では、教務部長を務め、カリキュラムの改訂や入試業務に積極的に取り組んできた。現在は、学習指導要領の改訂に伴う学園内での探究学習の推進に向けて尽力している。 |
学校紹介
学校情報住所:東京都豊島区北大塚1-10-33在校生:720名(中学)今回導入したクラス:中学1年生導入時期:2022年4月〜 |
生徒の自己肯定感を高める方法を模索していた
25年間の教員人生の中で、森先生は『生徒の自己肯定感を高める』という課題と向き合ってきた。しかし、教員として生徒に対して何ができるのか、なかなか正解は見つからなかったという。
そんな中で知ったのが「生きる力」の測定と育成を行うEdv Pathの存在だ。
当時の心境について森先生は「これはすごいと思いました。自己肯定感のような目に見えないものを見える化できることに驚きましたね」と語る。
生徒の自己肯定感の低さについては、どの教員も課題意識を持っているはずだと感じていた森先生。Edv Pathの採用前は、新しいシステムを導入するのには相当なエネルギーを要するだろうと躊躇する気持ちと、この機会を逃したくないという気持ちの間で揺れていたと当時の心境を振り返る。
森先生は「以前から抱いていた課題意識があったからこそ、今エネルギーを注ぐべきだと判断して導入に踏み切れました」と語る。
生徒の現状を把握することが大切
「自己肯定感がないと成績も上がっていかないんです」と語る森先生。学力と自己肯定感の関係について森先生は次のように続ける。
「自分に自信のない子は『自分は勉強をしても駄目なんだ』と思ってしまう。そのマインドを持ち続けると、学年が上がるにつれて成績も伸びていかなくなるんですね。だから、成績と自己肯定感は切っても切れない関係だと思います」
生徒の自己肯定感を涵養し、学力向上に繋げていくためには生徒が自分に自信を持てない理由や背景を把握することから始める必要があると森先生は続ける。
「自己肯定感は上がり続けるものでも、一朝一夕で伸びるものでもありません。ご家庭の状況や友人関係、テストの結果など、時期によって波も生まれます。だからこそ、常に生徒の現状を把握することが重要だと考えています」
Edv Pathの導入後、森先生が真っ先に取り組んだのは「同じ学年を担当する教員に現状把握の重要性を伝えること」だった。「生きる力」の測定結果を向上させることに注力するのではなく、数値をもとに生徒がどのような状態にあるのかを把握し、一人ひとりの生徒に寄り添った支援内容を検討するための材料にしたいと森先生は語った。
Edv Pathを用いて「探究学習」を
Edv Pathによる「生きる力」の測定とともに、森先生の学年では新たな試みとして中学校における探究学習もスタート。総合学習の一環として、Edv Pathのカリキュラムで自己探究に取り組んでいる。具体的には、生徒のこれまでの人生を振り返り、過去の出来事と、その時々に抱いた感情を時系列に沿って書き出す「ヒストリーライン」の作成など、将来へと視野を広げるためのカリキュラム内容となっている。
第1回目となるカリキュラムは2022年5月に実施された。これまで取り組んだことのないワークに対して生徒が戸惑う様子も見られたという。
「生徒だけではなく、最初は教員もどのように授業をしたらいいのかわからず戸惑っていました。しかし、授業の回数を重ねる度に教員も慣れていき、Edv Pathの効果的な使い方の理解を深めていけました」と森先生は振り返る。
継続することで生徒に変化が
担任が中心となって前向きな声掛けをしながらカリキュラムを継続していくことで、徐々に生徒の姿勢にも変化が現れたと、森先生は当時の驚きについて語る。
「最初の授業では、生徒も『これ何だろう?』という反応でしたが『今日はEdv Pathの授業だからね』と声を掛けながら続けているうちに、だんだん慣れていったようです。『自分の将来について考えよう』と言ったら、最初は『えー』なんて言ってたんですけど、いつの日からか『グループで話し合ってみて』と言うと『私はこうなりたいんです』と積極的に自分について発言できるようになったんですよ」
Edv Pathのカリキュラムは、個人ワークとグループワークを併用した取り組みを行う設計になっている。授業では、生徒がプリントに自身の考えを書き込んでいく。さらに、プリントに書いた内容をペアやグループで発表し合うことで、生徒自身が自分の人生について深く考える時間を過ごせたという。
「生徒たちが自分の将来について話すことに対して抵抗感を抱かなくなりましたね。クラス全体では話しにくくても、3~4人のグループであれば話せるようになっていったんです。経験を積んでいくうちに、だんだん変わっていく様子が見られました。また、面談の際、生徒が書き込んだプリントを保護者の方と一緒に見ながら話をすることで、新しい発見があったり、改めて生徒の理解に繋がることもあったりもしました」と森先生は語った。
十文字中学校・高等学校では、2022年度の実証結果を踏まえて、2023年度には中学校1~3年生、高校1~2年生を対象にEdv Pathを導入することが決定している。森先生は他学年も含めた導入に向けて「事前の教員研修や説明会を実施していかなければ」と今後の意気込みを語った。